ロンドンの空港から市内へ
5年前にロンドンに来た際は、ヒースロー空港から市内へ出る鉄道のルートは2つ、追加料金がかかるヒースロー・エクスプレスでパディントン直通か、時間がかかる昔ながらの地下鉄ピカデリー・ラインかであったが、2022年にエリザベス・ラインが新たに正式開通し、断然市内へのアクセスが便利になった。エクスプレスと並行のヒースロー・コネクトという線を市内中心部に延伸して東につながるようになったような路線だ。ヒースロー・エクスプレス、前回華々しく看板でてたけど、今回は仮設チケットブースも寂しい感じで、使う人いるのかと心配になる。
エリザベス・ラインは市内中心ゾーン1を東西に横断し、ゾーン内で5つの駅に止まる。この5つはいずれも既存の地下鉄の駅とステップフリーでつながって、車いすでも乗り換え可能(車両を間違えなければ基本段差もない)。ゾーン1内の車いすでも利用できる駅はやはり限られているが、移動はかなりしやすくなった。ゾーン1にはウォータールー・アンド・シティ・ラインとノーザン・ラインのバタシー・パワー・ステーション行きの路線、テムズリンクというナショナル・レールの路線も新たに通っている。
ロンドンのタクシー
タクシーは5年前も基本すべて車いすで利用可能。スロープの出し入れが引き出し式に替わっているようで、前の開き式のほうが楽そうではあった。
雨など、非常の際にはタクシーが気楽に(料金は高いが)利用できるので、ロンドンの移動で心配することはあまりない。
ロンドンのバス
ロンドンは地下鉄が非常に便利な交通手段であるが、中心部は古い路線が多く、車いすで利用できる駅は限られている。車いすでの細かな移動はバスがメインになる。こちらは5年前もスロープ完備、車いすスペースも必ずある。
バス路線は膨大で、大体いきたいところに行く路線が見つかるが、複雑すぎてわかりにくかった。今はスマフォアプリで行き先路線の番号を調べると、乗るバス停の位置も地図で確認できるので迷わなくなった。
チェンジング・プレイス —大きな個室トイレ
チェンジング・プレイスは、1人か2人の介助者がついているような重度の障害のある人たちのためのトイレです。
高さ調節可能な大人サイズの更衣ベッドと天井ホイストシステムが設置され、移動は着替えに介助が必要な人が使える十分な広さがあり、多くはシャワーも付いています。
2020年に改正されたイギリスのビルディング・レギュレーションには、主に新築の建物と大規模な改修が行われる建物の両方において、特定のタイプの(集会、レクリエーション、娯楽の目的で使用される)ものにチェンジング・プレイスを設置する規定を追加しています。
ナショナル・レールのターミナルであるユーストン駅にチェンジング・プレイスがありました。
行ってみると入口にカギがかかっていて入れない。仕方なく一般トイレに戻り、こちらの奥にでも車いすトイレがないかと覗いてみたところ、作業着のおじさんが出てきて「こっちじゃない」と言ってポケットからじゃらじゃらと鍵束を出して先ほどのチェンジング・プレイスを開けてくれた。
出てくる時には、両手にクラッチの少年が待ち構えていて入れ替わりで入っていった。
オーバーグラウンドで郊外へ
ロンドンの地下鉄はアンダーグラウンドというが、市内で地上を走る路線はオーバーグラウンドという。
中心部の地下鉄駅から郊外の駅で乗り換えてオーバーグラウンドを利用、新興の再開発住宅地へ。
この郊外の乗換駅ではフォームとフォームの間を地下通路でつないでいて、それぞれのフォームには長いスロープで上がるようになっている。
車いすで改札を通ると、待機中の駅の人が必ず何か必要でないかと声をかけてくれる。
市内の地下鉄のステップフリーの駅は、フォームがそこだけかさ上げされていて車両とのギャップをなくしています。
DLR ドックランズ・ライト・レイルウェイ
2012年のロンドン・オリンピック・パラリンピックを機に一気に再開発が進んだロンドン東部は、もともと80年代のドックランズという地域の再開発時からドックランズ・ライト・レイルウェイDLRという鉄道路線がつくられてきた。DLRの駅は改札がなく、タッチ式のカードパスOyster(東京でいうスイカ・パスモのようなもの)か、今はコンタクトレスのクレジットカード、スマフォで駅のカードリーダーにタッチして乗降する。新しい路線なのですべてステップフリー。
テムズリンク
今回テムズリンクの鉄道は車いすで利用していないが、写真だけ。
空港へ
5年前はスペシャル・アシスタンスと案内されていたが、アシスタンスだけになっているのは、もっと幅広く利用者を受け入れるためでしょうか。
ロンドンは2012年のオリンピック・パラリンピックを経て明らかにバリアフリー化に勢いがついた。前述のパリと比べると、移動の保証はかなり定着している印象がある。パリは2024年を経て、さてどれほど変わっていくでしょう。
〈編著〉松井彰彦・塔島ひろみ
〈著者〉小林エリコ/西倉実季/吉野靫/加納土/ナガノハル/村山美和/田中恵美子/小川てつオ/丹羽太一/アベベ・サレシラシェ・アマレ/石川浩司/前川直哉
兄の性暴力で子ども時代を失った人、突然に難病に襲われ死の淵を見た人、アングラミュージシャンの夫と離婚しシングルマザーとなった人、トランスジェンダーゆえに説明し続けなければならない人、精神障害のある母親に育てられた人、幼年時代に親と離れて施設で暮らした身体障害のある人、顔に生まれつき変形がある人、元たまの人、テント村で暮らす人……。「フツウから外れた」とされる人々がつづるライフストーリー14編を収載。社会の不平等や偏見、家族のトラブルや無理解などに悩み、抗い、時にやりすごして今、それぞれ何を思うのか――。
発行:ヘウレーカ
価格 1,800円+税
ISBN978-4-909753-14-4
詳細は ヘウレーカのページへ
2つの東京パラリンピック―それらから見えてくること― 法政大学名誉教授 松井亮輔
新型コロナと空想科学 大関智也
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〈エッセイ 著者リスト〉
〈エッセイ目次〉
~ NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会理事アベベ・サレシラシェ・アマレさんのお話~
各エッセイは筆者個人の意見であり、REDDYの見解とは必ずしも一致しません