REDDY 多様性の経済学 Research on Economy, Disability and DiversitY

特集エッセイ 
コロナ弱者:わたしが見たコロナ

タイトル一覧

2020年10月21日

ひょっとこ爺さん徒然の記

曽根原純

コロナ川柳 107 生活エピソードを中心に
2020年9月30日

ひょっとこ爺さん徒然の記

曽根原純

十五年前 買った時計に 惚れ直す
2020年9月16日

介護施設の現場から

三本義治

〜コロナうず〜
2020年8月12日

言語の多様性

森 壮也

世界に急速に拡がるもうひとつの「新型コロナ」
2020年7月29日

ひょっとこ爺さん徒然の記

曽根原純

小説世界の疑似体験の旅
2020年7月15日

ケアを受ける障害者の入院は

丹羽太一

世の中だいぶ緩和ムードとは言え、新型コロナウイルスCOVID-19が相変わらず感染者数を積み上げていっている。そんな中、救急の発熱外来で診察を受ける羽目になった。
実は3ヶ月前に、蜂窩織炎という皮膚の感染症で入院しており、今回の発熱に関しても熱以外になんの症状もなかったので、恐らく再発だろうということで、前回と同じ病院の救急外来に電話してから、一応最低限の入院の用意をして向かった。

前回は、発熱してはいたもののやはりそれ以外の症状がなかったからか、救急車だったのである程度の判断がすでにあったからか、マスク以外は警戒もなく(CTで肺炎の確認はしたが)、血液検査、尿検査をして炎症値が高いことだけが確認されて、早々に病棟に運ばれた。
翌日昼間に細君が入院に必要なものを携え面会に来た。隣のおじさんは呼吸器を付けているらしく、やはり奥さんがやってきていろいろ面倒を見ているようだ。すでに病院の面会は制限されはじめていたが、身の廻りのことができない患者さんは、家族が手伝いに来ることを許可されていた。わたしの場合もベッド上での食事(と歯磨き)介助、熱が下がってからは空いた時間に車いすに移乗して洗面所に手や顔を洗いに行ったり、処置以外で看護師がやることの代わりを細がやることもできた。車いすの移乗などは、なれない看護師がやると(それでも何度かやってもらったが)人手も時間も掛かってなかなか頼みづらいところがあるので、こちらも大いに助かった。

今回は初めから様子が違った。まず空気清浄機のある個室に通され、当直の医師が来ると、症状から見て「まあ、可能性はほとんどないと思いますが」、発熱ということでコロナ疑いで対応ということになり、マスク防護服手袋にフェイスシールドで検査される。ここでは抗原検査とPCR検査ができるようになっていたので、血液検査、尿検査にこれが加わった。その時点で熱がどんどん上がり寒気がすごくなって震えだしたのでやはり入院となり、コロナ疑いのまま病棟の個室に運ばれた。すぐ蜂窩織炎対応の抗生剤で点滴が始まるが、看護師はひとりずつ、同じように完全防護で用が済んだらすぐ出ていく。家族はここまでで、本人が新型コロナであってもなくても、現在病棟の面会は禁止になっているので、明日からの面会は難しいと言われる。
翌朝再度PCR検査があり、昼までに陰性が判明したので防護服の対応はなくなり、午後には大部屋へ。解熱剤で熱が少し下がって、食事も三食出るようになり、3日ほどで平熱になる。
熱が下がったので、担当医師に言って入浴と車いす使用の許可を出してもらった。
週末前だったので、前回はこのタイミングで看護師によるシャワー浴か、少なくとも洗髪はしてもらっていた。午後は車いすで洗面もできた。
しかし今回はなぜか、恐らくベッドから車いすにもシャワー用の車いすにも移動させるだけの人出がないのか、一度もベッドから下りずに週末へ突入。土日はさらに人がいないので、やはり車いすには乗れなかった。寝るか、ベッドの背の部分だけ起こして座った姿勢になるかしかないので、昼間はひたすらベッドを起こして、普段なかなか読む時間のない小説などを読む。実は上肢に障害があると、寝たままでは本当になにもできないので、本を読むにしろ水を飲むにしろ携帯を見るにしろ、背もたれを起こさないことにはどうしようもないのだ。車いすならさらに移動ができるのだが、ベッドではそれも叶わない。大部屋の狭いカーテンの仕切りのなかでひたすら本を読む。とはいえ幸い、隣のベッドは二日目から空いていて、そちらのカーテンを半分開けて外(といっても向かいのビルが見えるだけ)を眺めることができたのはかなり気分が違った。締め切っていると晴れか雨かもわからない、堂籠もり状態なのだ。
月曜日は検査や新規入院受け入れが重なり病棟が一番忙しい曜日である。その日も看護師は慌ただしく、なんとか翌日の洗髪を約束してその日もベッド上で一日過ごす。その日血液検査で異常がなくなったので、薬を切り替え、一日見て退院となった。これまでの入院では退院前には必ず入浴が入るので、明日は洗髪だけでなく入浴になるだろう。
と思っていたが、結局ベッド上での洗髪のみで、退院まで一度もベッドから離れることなく、只管打坐の一週間であった。

いや、わたしが積極的にお願いすれば,車いすに移すこともシャワーに入れることも断ることはなかっただろう。別に病院や看護師を責めるわけではない。いろいろな場面で介助が要る人の入院は大変なことなのだ。特に慣れないことをやってもらうのは、頼むほうもハードルが高い。増して、防護服にフェイスシールドでそれなりの身長の男を抱えることになれば人手も労力も余計に掛かるだろう。
もし、新型コロナ感染による入院が必要になったら、治療以外にも気になることは、こうした完全看護体制での入院がどこまで重度の障害に対応できるのか、という点だ。
在宅では訪問介護が機能不全になる障害者の新型コロナ感染は、やはり早期入院が望ましいのだが、特に軽症時の日常動作の介助は、治療以外の面でも看護師の負担を増やすことになりかねない。これまでの数回の経験からは、看護師はこちらの普段の生活に合わせ積極的に動いてくれるし、少なくとも希望を伝えればその通りにやる努力を惜しむようなことはない。しかしどんな些細な仕事でも人手は掛かることになるだろうし、慣れない車いすへの移乗などは防護服では負担も大きい。さまざまな点で完全看護には難点が出てくるだろう。

現時点では、一般的に軽症者は自宅または代替施設での隔離で療養となっているが、介助者が必要な障害者はどちらにおいても一人で過ごすことはできず、当然感染リスクがあるため介助者に来てもらうこともできない。病院側も、身体に障害がある場合は重症化の懸念などもあり、目の前にそういう患者がいれば早期の入院を恐らくは受け入れていくのではないか。しかし、負担になるのは看護師で、軽症で寝ている場合でも、接触機会がそれなりに多くならざるを得ないこういったケースは、病棟全体に余裕がなければ入院自体を拒まざるを得ないことにもなりかねない。そのときにどこへ行くのがよいのか、解決する方法はない。患者の増加による今後の医療体制への負担増が非常に不安である。

今は暖かくなり、気分も明るくなっていく季節だが、このままではいずれ桁の違うより強力な第二波がやってくるだろう。それまでに病院、医師、看護師の余裕は確保できるのか、医療の充実にせよ市中感染拡大防止にせよ、特に行政による有効な医療的経済的支援策が手遅れにならないことを願っている。

2020年7月15日

介護施設の現場から

三本義治

〜攪乱(かくらん)〜
2020年7月1日

ひょっとこ爺さん徒然の記

曽根原純

テレワーク
2020年6月24日

発達障害とわたし

Pafupafu Flower analchang

コロナと就職活動(前半)
2020年6月8日

十人十色

村上愛

科学と隔離
2020年6月3日

ケアを受ける障害者の生活は

丹羽太一

日常生活のさまざまな場面で身体的な介助を必要とする障害者は、ヘルパーとの毎日の接触が欠かせない。在宅で訪問介護を受ける場合、朝は着替えや車いすへの移乗から洗面に始まり、三度の食事やトイレや入浴、就寝の際の移動や着替えまで、必要なときにはその都度ヘルパーがやってきて介助をしてくれる。重度の場合は一日24時間、複数のヘルパーが入れ替わり付き添っている。身体的な介助なのでフィジカル・ディスタンスというわけにはいかない。この密接な関係があってこその社会的な生活であるから、それがわたし達のソーシャル・ディスタンスにならざるをえない。
感染症の予防にはうがい・手洗いが基本であると言う。普段からヘルパーは、家にやってきたらまずうがいと手洗いをしている。いまは玄関にアルコール消毒をおいて、手洗いも特に念入りだ。これで外で触れたものでもしなにか拾っていても、手から他に移すことはないだろう。ヘルパー自身がまず感染しないようにすれば、介助を受ける側も安全だ。どちらも感染していなければ、普段の延長で気を遣えばそれでなにも問題はないのかも知れない。
今回やっかいなのは、いわゆる無症状の感染というものがあるということだ。
もしヘルパーがその状態で介助に入った場合、どんな形で介助を受ける側に感染するのか。いまはヘルパーはマスクをして仕事をしている。いわゆる飛沫感染はある程度防げるのかも知れない。エアロゾルと言われるものはどこまで防げるのかわからない。
もし介助を受ける側が感染しているのに気づかない場合は、今度はヘルパーが危険になる。食事や歯磨き、入浴の際はこちらはマスクをしていない。さらに危険な状態にさらされることになる。

訪問介護には、感染症に関してこの二方向の危険があり、それぞれ問題点が変わってくる。もちろん、気づかずに感染させてしまうという危険は相互に問題であるが、感染が判明することで起きる問題はまた別にある。
介助を受ける側は、まず感染に対して重症化する危険があるが、そうでない場合もいろいろな問題がある。感染していても軽症であったり、もし濃厚接触者であると言われた場合でも、感染者として対応を考えなければならないだろう。
上述のようにヘルパーに移す可能性は逆より高いかも知れない。当然ヘルパーは無防備に介助に入ることができなくなる。しかし、障害者はヘルパーがいなければなにもできない。ヘルパーの訪問を断られることは生活以上に生命の危機になりかねない。どうすれば介助が可能なのか。ヘルパーがいわゆる回復者で抗体を持っていれば大丈夫なのか。感染症のプロではないヘルパーがマスクと防護服を着けて消毒しながら介助できるのか。そういった装備は十分確保できるのか、その使い方はどこで教えてもらえばいいのか。
ヘルパー派遣事業所がそこまで考えて準備する必要があるならば、公的にそれを支援する体制も必要である。
日本障害者協議会(JD)が厚労省への要望としてまとめた項目(※1)のひとつに、訪問マニュアルを作成し、そのなかで感染防止対策を取り上げるというものがあった。ここで前もって必要と考えられるのは、例えばマスクと防護服の着用、介助の際の注意点、使用済みの装備品の廃棄や自らの消毒方法など、かなり高度な予防知識である。さらにその状態での重度の障害者の介助方法も含め、専門的な研修を受けておくことだ。その要望書では別項目として、消毒液、防護衣、サージカルマスクやN95マスクなどの高機能のマスクの定期的な供給も要望している。同様の要望書は訪問介助サービスを提供するNPO等の連名でも出されている(※2)。
※1 【緊急要望】 障害のある人のいのち・健康・くらしを守るために http://www.jdnet.gr.jp/opinion/2020/200511.html
※2 訪問系サービスにおける新型コロナウイルス対策の要望書 http://haskap.net/2020/04/20200410.html

JDの要望書ではさらに、障害のある人が感染した場合は、障害特性等を踏まえ速やかに入院治療を受けられるようにすることを求めている。
障害があることで呼吸器や循環器、泌尿器などに問題がある場合は重症化リスクは高い心配がある。それに加え、上記のように在宅でのヘルパー派遣に感染の危険がある場合、ヘルパーとその派遣事業所を通じた連鎖的な感染拡大の可能性もあり、不必要に感染者を増やすことになりかねない。訪問介護は地域でネットワークを形成して複雑につながっていることも多い。それを利用する高齢者や障害者だけでなくその家族の孤立やヘルパーの家族の不安といった間接的な関係者への影響も大きい。訪問介護が機能不全に陥ることは地域全体の福祉環境の危機にもなる。自宅での自主隔離にこうした限界がある障害者の、感染対策が万全である病院への早期の入院は、そういった意味でも安心材料のひとつになり得る。もちろん、それにはすべての患者への充分な治療の保障、医師、看護師などの医療従事者の安全確保、そのための病院の装備や施設、設備、人員まで不足することのない医療資源の余裕が前提であるから、ハード、ソフトのあらゆる面での受入医療機関の整備が制度的にも支援されることが重要である。
在宅で訪問介護を受ける人たちの適切なタイミングでの入院治療といった地域の福祉と医療のスムースな連係への理解が、特にこうした非常時には求められる。さまざまな場面でそうした連係ができる強固な社会基盤の実現が、いわゆる社会的弱者を含めた地域住民の生活環境を支えることになる。

2020年5月20日

ひょっとこ爺さん徒然の記

曽根原純

新型コロナに怯えながら
2020年5月13日

介護施設の現場から

三本義治

〜高齢者施設スタッフとして〜
2020年4月24日

バタバタ公園バタフライ

小川てつオ

結局、ホームレスはコロナ10万円、貰えるのか?
2020年4月22日

身体障害のある不安

丹羽太一

わたしは(内科的な病気ではあったが臨床的には)頸椎損傷C4の身体障害者だ。日常のほぼすべての生活を、ヘルパーの介助によって支えられている。わたしのような人たちが、新型コロナウイルスCOVID-19によるどのような影響を受け得るか、日々感じていることから考えてみたい。

頸椎損傷の身体障害を抱える人は、胸や腹まわりの筋力が低下しており、肺活量が非常に小さい。咳もくしゃみも弱々しい。痰なども出にくいため、風邪をひいても菌やウィルスが外に出せず、すぐに悪化し肺炎になることも多い。コロナウィルスによる呼吸器疾患についてもこれは同様で、ウィルスを吸い込むとそのまま重症化するリスクは非常に高い。COVID-19は2020年4月時点で未だ治療薬もなく、もし罹ってしまったら肺炎で・・・というのはわたしもリアルに感じている。よく食べてよく寝て、それで一般の健康な人たちと比べ、こういった人たちが免疫力だけでウィルスに敵うのかどうかはまったくわからない。

頸椎損傷などの重度の身体障害がある場合は、食事でもトイレでも入浴でも着替えでも車いすへの移動でも、さまざまな生活の場面で日常的にヘルパーを利用している人も多い。身体介助なので、室内で触れたり支えたり抱えたり、密着度も最大だ。ヘルパーとの接触は生活にとって必須なことで、どんなに自宅に籠もっていても、その点では外部とのつながりを絶つことはできない。もちろん、ヘルパーを派遣する事業所もプロフェッショナルだ。彼らの健康管理には細心気を遣っているから、信頼に値しよう。反対に、こちらも気をつけてヘルパーに迷惑をかけないように心掛けねばならない。それでもCOVID-19は発症まで1週間前後気づかないというから、お互いに感染させるリスクはゼロではない。最低限の生活を維持しながらなるべく可能性を減らしていく方法を考えるしかない。
もしヘルパーに感染者が出るようなことがあって、事業所からの派遣が止まってしまったら、一切の生活が成り立たない※。1人ではベッドから起き上がって水を飲むことすらできない。トイレもいけない。どうすることもできないから、そんな事態を考えることもできない。
家族がいたとしても、その家族が倒れたら・・・どうすればいいのかまったくわからない。
ヘルパー派遣事業所などは、医療従事者と同様、早期に感染の有無を検査して、いわゆるクラスターの発生を防ぐことが優先されるべきではなかったか。この辺りの対策は実際どのようになされているのか、介護の現場ではあまり聞いていない。

※視覚による障害がある人は、買い物など生活に必要な外出にヘルパーが必要な場合があるが、派遣する事業所が外出の支援を控えているケースも増えており、どうされているのか、気になっている。

近所で無症状の感染者と接触することにも敏感にならざるを得ない。そのために外出を控えても、ヘルパーとの接触は避けられず、今度はヘルパーが外で同様に感染する危険にも気を遣う。その危険を極力回避するためには、ヘルパーの検査以外に、全体の検査をしっかりして無自覚の感染者を減らすことが最も重要になるだろう。

身体に障害があるから、普段から身体のケアに必要な日用品もある。わたしは尿路感染や皮膚の感染を経験しているので、消毒用アルコールや除菌ウェットティッシュを常備している。医療的なケアが必要な人はさらにいろいろな医薬品も必要だろう※。今回、マスクがないのも困ったことだが、アルコールや石鹸などの除菌グッズも手に入らなくなっている。介助用にグローブが必要な人もいる。だれもが感染の不安を抱えるいま、この情況にいらだちを感じていると思うが、普段から感染予防が必要な障害者などは、ウィルス以外の感染症への不安も抱えることになりかねない。病院が非常事態に陥っている状態で、普段なら簡単な治療や入院治療で治るものも、素早い対処が可能なのかどうか、ここにも懸念がある。

※人工呼吸器などを利用する障害者、難病の人や子供は、消毒用アルコールと医療用のゴム手袋が欠かせない。もしストックが底をつけば、より深刻な命の問題になりかねない。医療従事者と共に、こういった現場に必要なものが届かないことを防ぐ余力がなかったとしたら、それはそれを支える態勢のどこかに根本的な欠陥があるのではないか。

いまコロナで変わった点、困っていること、気を付けていること 冨田佳樹

* ヘルパーとの外出、通院、訪問リハビリの中止。
* 呼吸器、カフアシスト(排痰補助装置)のマスク消毒にアルコール綿が必要。店頭で品薄。
* 呼吸器と併用している加湿器に精製水が必要。コロナ感染流行以降、店頭で品薄が続いていて調達が難しい。
* 介助者(家族、ヘルパー)からの感染が怖い。

感染予防だけでなく、医療ケアの消耗品が品薄なのが不安です。
完全介助が必要な重度障害者が、感染入院となったときに受け入れ先の病院が見つかるのかも心配です。

常備薬が必要な人も多い。重大な基礎疾患がなくても、日常のケアの中でさまざまな医薬品の処方箋が必要であれば通院が欠かせない。症状によってはリハビリなど体力の維持にも、経過観察のための定期的な診察にも病院に通う必要があるだろう。そこでの感染のリスクも、いまは高まってきているのではないか。外来の安全な利用を早急に確立してもらいたいが、遠隔診療と日常薬の処方の簡略化もこういう状況下では検討してもらいたい。

もし感染してしまったら・・・呼吸器疾患に弱い身体障害者は、前述のように重症化のリスクは高い。治療も困難になるだろう。
たとえ軽症でも事業所は当然ヘルパーの派遣ができなくなるため、自宅での待機は不可能だ。あとは入院するよりほかないだろう。家族がいても、自分も感染しているかも知れない上で病人のすべての面倒を見ることはできない。家族も寝込んでしまうかも知れない。その不安を抱える家族の精神的なストレスも相当なものになる。ちょっとした体調の変化にもおびえる毎日だ。
入院に関しては病院への負担も大きくなる心配がある。わたしの場合通常の入院は、完全看護の大病院に行くことがほとんどだ。看護師が治療以外に必要なケアもやることになる。普段でも患者としてはなるべく看護師の手を煩わさないように、なるべくお願いすることを減らすようにする。しかし、この非常事態と言われるなかで、こんなに手の掛かる患者を、しかも感染の危険もあるから重装備でケアすることになるのに、受け入れられるところがあるのだろうか。受け入れてくれたとして、充分なケアができるのだろうか。もちろん、現場にはいつも患者のために最善を尽くすことを厭わない、誇りを持った人たちがいる。でも、彼らにも不本意ではあっても限界だってあるだろう。とにかく、多くの人を救う治療を最優先してもらわねばならない。入院に関しては、どうするのがいいのか、わたしにもわからない※。

※ある事業所関係者と、完全看護の負担を減らすために、例えば外出支援が減ったヘルパーなどを(本人の意志で、感染対策が万全ならば)事業所から専任で病棟に派遣して、介護部分を手伝うことができないか、という話も出ていた。

誰もが、心理的な負担を感じていると思う。増して、周りの人たちの力を必要とする障害のある人たちは、そういった支援や治療の不安定にもなりかねない事態のなかで、落ち込まないように必死に自分を保っているのではないか。わたしは従来楽天的なほうだと思うが、それでも時折絶望的な気持ちになる。

いま、多くの世界中の障害者、難病患者が、いわゆる命の選別、優生思想につながるような治療の序列化という現実の到来を危惧していることも、SNSなどで見られるようになった※。医療現場の逼迫が、また別の人道的な危機を招くようなことは誰も望んでいないはずだ。医療は金勘定で考えられるものでないことがいまやはっきりした。行政をはじめ、すべての医療の充実、医療における危機管理の重要性はこれを機会に再考し、改善していってほしい。同時に、いまは検査態勢の充実と早期治療の実践による安全な医療の確立に取り組んでいってほしい。できることはなんでもやってほしい。

※参考 https://yasuhiko-funago.jp/kokkai/page_200413.html

ウィルスには国籍も人種も宗教も、地位も年収も、年齢も性別も障害の有無も関係がない。ウィルスはそんなことには関係なく誰にでも感染する。だからこそその影響は弱者によりシビアに降りかかる。しかし社会的弱者を創り出すのは人間だ。であればその弱者を救えるのも人間社会だ。障害が社会的な問題であるなら、障害のある弱者を救えるのも人間社会だろう。
予断を許さないこんな状況がいつまで続くのか、誰にもわからない。それでも希望を持っていられる世界であるはずだ。

4月24日追記
グリズデイル・バリージョシュアさん@アクセシブルジャパンにお話を伺う機会を得た。 脳性麻痺で車いすを利用するグリズデイルさんはカナダ生まれ。東京で10年以上生活しいまは日本に帰化している。

—やはり呼吸器まわりの筋力は弱いため肺炎が心配。介助者として日常的にヘルパーを利用しているので、ヘルパーからの感染リスクはあるが、隔離生活はできない。事業所で感染者が出ればヘルパーが来られなくなり、生活できない。自分が感染したときは、ヘルパーには頼めないからやはり入院が必要。入院は最近していないので不安。軽症時の早い処置を望んでいる。 アメリカでは障害者が、罹りやすいことと治療時に後回しにされる選別を警戒しているという。 カナダの家族は日本の状況がわからず心配しているようだ。家族に感染者が出ても、日本からはいますぐはカナダに帰れないので、それも心配している。離れている罪悪感もある。

日常でわたしと同じような心配を抱えながら、外国で離れて暮らす家族の心配もあると言う。

2020年3月25日

バタバタ公園バタフライ

小川てつオ

それでもなんとか生きていく(か?)
2020年3月10日

十人十色

村上愛

白いマスク

エッセイ目次

 

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