僕は北国の生まれだ。冬になるとあたり一面が雪に覆われる。雪が降った朝は、そこいらじゅうで住人が屋根の雪を下ろし、道路には除雪車が走る。春が来るのは遅く、桜が咲き始めるのは5月ごろだ。
僕の父親はヤクルトの営業をしており、母はパート勤めをしていた。共働きのため、両親は家にいないことが多かった。僕には5つ離れた兄がいたが、年齢が違いすぎて遊び相手になってくれない。
小学生になり、授業を受けるようになったが、先生の言葉がスッと頭に入ってこない。僕はあまり勉強に向いてないらしい。学校が終わると、友達とサッカーボールを蹴って遊んだ。
友達と遊ばない日は、学校から帰ると、自分で鍵を開けて家に入る。静まり返った室内にいると、寂しさが身に染みてくる。僕は自分の部屋にあるテレビをつけると、ファミコンの電源を入れた。数年前に発売された世界初の家庭用ゲーム機に僕は夢中だった。電源を入れると勇ましい電子音楽が流れる。様々なモンスターを倒し、ストーリーを進ませているうちに、寂しいという気持ちはどこかに消えて、時間はあっという間に過ぎていった。
1977年生まれ。茨城県出身。短大を卒業後、エロ漫画雑誌の編集に携わるも自殺を図り退職。
その後、精神障害者手帳を取得。その後、生活保護を受給し、その経験を『この地獄を生きるのだ』(イースト・プレス2017)にて出版。各メディアで話題になる。
その後の作品には『生きながら十代に葬られ』(イースト・プレス2019)、『わたしはなにも悪くない』(晶文社2019)、『家族、捨ててもいいですか?』(大和書房2020)、『私がフェミニズムを知らなかった頃』(晶文社2021)、『私たち、まだ人生を1回も生き切っていないのに』(幻冬舎2021)、『怒りに火をつけろ』(ことさら出版2025)がある。
→エッセイ 地獄とのつきあい方
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