2022年秋に障害者権利条約の日本における実施状況について初めての審査結果である総括所見が公表された。そこで7回言及されているのは障害の人権モデルである。障害学の基盤をなす障害の社会モデルへの言及はない。そのため、改めてこの二つのモデルの関係に関心が集まっている。
そこでこの二つのモデルの関係について取り組んできた二人の専門家をお迎えして研究会を開催する。
一人は、障害の社会モデルと人権モデルの関係を明らかにした論文の著者であるアンハラッド・ベケット教授である。ベケット教授は英国リーズ大学社会学・政策学部の教授であり、同大学の障害学センター長をつとめた経験を持つ。また、障害学のジャーナル(International
Journal of Disability and Social Justice)の編集長を務めている。
一人は、国際人権法学・障害法学の観点から障害学に取り組み、多くの実績を持つ川島聡教授(放送大学)である。同教授は、障害学会・日本障害法学会・国際人権法学会の理事である。
参考資料
The social and human
rights
models of disability: towards a complementarity thesis
障害の社会モデルと人権モデル:相補論に向けて (JD仮訳)
*アンハラッド・ベケットさん関連イベント
JDF全国フォーラム(12月6日:オンライン)
障害者権利条約「総括所見」を受けた取り組みと課題
-障害の社会モデルと人権モデル 条約実施にどう生かすか-
https://www.normanet.ne.jp/~jdf/seminar/20231206/index.html
アンハラッド・ベケット教授研究会(11月27日、立命館大学朱雀キャンパス)
「脆弱性と社会的排除 – 新型コロナウイルス感染症と世界の障害者」(仮)
https://www.ritsumei-arsvi.org/news/news-4991/
〈編著〉松井彰彦・塔島ひろみ
〈著者〉小林エリコ/西倉実季/吉野靫/加納土/ナガノハル/村山美和/田中恵美子/小川てつオ/丹羽太一/アベベ・サレシラシェ・アマレ/石川浩司/前川直哉
兄の性暴力で子ども時代を失った人、突然に難病に襲われ死の淵を見た人、アングラミュージシャンの夫と離婚しシングルマザーとなった人、トランスジェンダーゆえに説明し続けなければならない人、精神障害のある母親に育てられた人、幼年時代に親と離れて施設で暮らした身体障害のある人、顔に生まれつき変形がある人、元たまの人、テント村で暮らす人……。「フツウから外れた」とされる人々がつづるライフストーリー14編を収載。社会の不平等や偏見、家族のトラブルや無理解などに悩み、抗い、時にやりすごして今、それぞれ何を思うのか――。
発行:ヘウレーカ
価格 1,800円+税
ISBN978-4-909753-14-4
詳細は ヘウレーカのページへ
REDDY/IDE-JETRO国際セミナー
公開講座の趣旨
アジア経済研究所では、2019~2021年に「中東における『障害と開発』」研究会を実施し、イラン、レバノン、トルコ、イスラエル、パレスチナなど中東各地の国・地域における障害当事者の置かれている状況、当事者団体の活動、各国の施策などについて報告・議論した。本研究会では大きな成果が得られた一方で、イスラエルの専門家に外部委員として参加してもらったが、イスラエルの障害学については最終報告書では、十分に述べられたとは言えない。日本ではあまり知られていない貴重な研究成果を国際セミナーの形で発信する。
本セミナーのテーマは2006年に批准、2008年に発行された障害者権利条約(CRPD)について「障害者権利条約の『現地化』を考える」である。CRPDの実現については、条約自体の啓蒙・認知の拡大の必要性もさることながら、各国の既存法制との調整(Harmonization)の問題が当初から議論されていた。一方で、イスラエルの障害学では、これに加えて、同国のユダヤ教の中のHarediと呼ばれるユダヤ教超正統派社会の影響が注目されてきた。イスラエルの専門家による研究では、CRPDの諸概念の受け入れで大きな障壁となる保守的な社会の成員への調査を通じて得られた知見と「現地化」を巡って考えなければいけない課題を提示している。同研究は、イスラエルの事例研究ではあるものの、未だ開発が現前の課題である多くの途上国にとって大きな示唆を与えてくれる。
本セミナーは、同研究の紹介と日本における同様の課題、またそれを社会科学の立場からどのようにアプローチし、解決していくかを議論するという内容で開催する。
情報保障:
日英同時通訳、日本手話通訳、日本語キャプション、点字資料
REDDY/IDE-JETRO International Seminar
The Institute of Developing Economies(IDE-JETRO) conducted a research project on "'Disability and
Development' in the Middle East" from 2019-2021 to report and discuss the situation of persons with
disabilities in countries and regions throughout the Middle East, including Iran, Lebanon, Turkey,
Israel, and Palestine. The discussed issues are the activities of organizations concerned, and
national policies. While the research group achieved significant results, the final report book did
not include much on disability studies in Israel, though the Israeli expert participated . We will
disseminate valuable research results that are not well known in Japan in the form of an
international seminar. The theme of this seminar is "Considering the 'Localization' of the
Convention on the Rights of Persons with Disabilities (CRPD)," which was ratified in 2006 and issued
in 2008. The issue of harmonization with existing legislation in each country was discussed from the
outset, as well as the need to increase awareness of the Convention itself. On the other hand, in
disability studies in Israel, the influence of the Haredi, or ultra-Orthodox Jewish community within
Judaism has been attracting attentions. The study by Israeli expert presents findings gained through
surveys of members of the conservative society, which is a major barrier in the acceptance of the
various concepts of the CRPD, and the issues that need to be considered around localization.
Although the study is an Israeli case study, it offers significant suggestions for many developing
countries where development is still a current issue.
We will have another presentation by Japanese researcher, which will discuss the similar issue
regarding the localization of rights of language related to Sign Language. The comparison between
the two resesarches would be very interesting. This seminar will introduce the study and discuss
similar issues in Japan and how to approach and solve them from the standpoint of social science.
Accessibility:
Japanese Sign Language interpreter service and
CART captions would be offered.
Blind and people with visual impairment
could be offered text data of the materials upon request.English-Japanese simultaneous translation.
Also, sign language interpretation, character
interpretation, and text data for reading for visually will be prepared (only in Japanese).
inquiry:reddy@e.u-tokyo.ac.jp
2021年5月、災害対策基本法が改正されました。その中で 個別避難計画の作成 は市区町村の努力義務となりました。
災害時の避難や避難生活に不安を感じている障害者の方は、まず身近な人と話をして、そして自分の住む市町村に問い合わせて個別避難計画の作成に取り組んでみてください。
2021年1月1日~2021年4月30日(部分的な再調査:2021年6月25日~2021年7月31日)、聴覚障害をもつ医療従事者の会と協働し、標記の調査を実施いたしました。
調査概要(第1報)
多数の医療従事関連国家資格を有する聴覚障害者の皆様より、ご協力をいただきましたことに、厚く御礼申し上げます。
REDDY性的マイノリティ班の前川直哉(福島大学特任准教授)が、和光大学の杉浦郁子教授と行った共同研究「東北地方の性的マイノリティ団体活動調査」の報告書が完成しました。報告書には東北地方の性的マイノリティ団体に関わる23名(19団体)の方へのインタビューを収録しており、東北の性的マイノリティ団体に関する本格的な学術調査としては初めてのものとなります。
REDDYサイトでは、ご本人の掲載許可を頂いたインタビューをPDFで公開いたします。
・2021年8月1日~調査概要を公開しました。
調査概要(第1報)
11月30日(土曜日)、東京大学本郷キャンパスにて公開講座「障害者差別解消法の見直しの課題ー障害平等研修と障害の社会モデル」を開催しました。
公開講座の趣旨
2013年に成立し、2016年から施行されている「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)の見直しの検討が内閣府の障害者政策委員会で進められています。障害者権利条約の批准に向けての国内措置として整備された同法の見直しの主な課題として、①差別の定義の欠如、②民間事業者に対して合理的配慮が義務付けられていないこと、③紛争解決の仕組みが十分でないことが指摘されています。来年、2020年に予定されている日本の障害者権利条約の初回審査に向けても、この法律を同条約に対応した形に改正することは不可欠です。
障害平等研修(Disability Equality Training:
DET)は、その障害者差別解消法を実施するための研修として推進されてきました。DETは、障害者の社会参加や多様性に基づいた共生社会を創ることを目的として、障害者自身がファシリテーターとなって進めるワークショップ型の研修です。対話を通じた「発見」を積み重ねていくなかで、差別や排除など、社会のなかにある様々な「障害」を見抜く力を獲得し、それらを解決していくための行動を形成します。障害の社会モデルに基づく、DETの新たな教材動画「I
am You」を紹介します。以下のリンクで、一部をご覧いただけます。
www.youtube.com 障害平等研修フォーラム 教材動画「I am You 」トレーラー
共生社会づくりのために、障害者差別解消法の見直しや障害平等研修に、ご関心のある皆様のこの公開講座へのご参加を歓迎します。
情報保障・アクセシビリティ
手話通訳、文字通訳、磁気ループ、点字レジュメ、拡大文字レジュメ、視覚障害者用読み上げ用テキストデータ
UTokyo バリアフリー最前線!第14回 熊谷晋一郎室長が取材原稿で伝える障害研究の現場①
「排除のゲームから包摂のゲームへ」経済学研究科 松井彰彦 教授の巻
REDDYの研究の背景が紹介されています
東京大学 学内広報 NO.1523(column corner
3番目バリアフリー支援室の記事です)
12月22日(土曜日)、東京大学本郷キャンパスにて公開講座「障害者権利条約の実施――批准後の日本の課題」を開催しました。
公開講座の趣旨
この公開講座では,障害者権利条約の実施を取り上げ、批准後の日本の課題を考えます。日本は、この条約を2014年1月に批准し、2016年に国家報告を障害者権利委員会(ジュネーブ)に提出し、2020年に報告審査を受ける予定です。報告審査に向けて、この公開講座においては、日本による条約の実施をめぐる現状と課題を多角的に明らかにしていきます。
2018年12月刊行の『障害者権利条約の実施――批准後の日本の課題』(信山社)への論文寄稿者23名の中から、障害者権利委員会の委員である石川准(社会学)、自立生活と障害女性に関する論文をそれぞれ寄稿された田中恵美子(社会福祉学)と瀬山紀子(社会学)、本書の編者である長瀬修(障害学)と川島聡(国際人権法・障害法)が登壇します。各講演は、質疑時間を含めて30分です。
情報保障
手話通訳,文字通訳,磁気ループ
4月7日(土曜日)、東京大学本郷キャンパスにて公開研究会「わたしと地域の回復—多様性のまちづくり 二つのLIFETIMEとこれからのコミュニティ」(社会資本としての住環境研究会 第2回)を開催しました。
4月よりREASEはREDDY - Research on Economy, Disability and DiversitY:「多様性の経済学」として新しい段階に入ります。
今回の公開研究会は,一般社団法人LIFETIME HOMES ASSOCIATION「社会資本としての住環境研究会」の企画として、まちづくりの側面から障害について考える、私たちにとっては新しい試みです。
イギリスで住宅設計の基準としてつくられた"LIFETIME HOMES"、地域計画の指針としてつくられた"LIFETIME
NEIGHBOURHOODS”は、「ライフタイム」、つまりそこに住む人たちひとりひとりの生涯を見通して、高齢者や車いすを使用する障害者も暮らしやすい住環境づくりのために考えられています。
この「ライフタイム」という考え方をひとつの切り口に、REASEのメンバーでもある東京大学先端科学技術研究センター熊谷晋一郎准教授に、個人史としての「ライフタイム」とそこから考えるこれからの地域の、物理的あるいは本質的なあり方の可能性を探っていただきます。
日本における地域包括ケアシステムは、福祉施設や公的な社会住宅だけでなく、戸建て住宅やマンションなどの個人住宅もその制度の中心基盤においています。これらの住宅を社会的インフラストラクチャーとして捉えた時、主に障害者や高齢者を対象としたバリアフリーやユニバーサルデザインというこれまでの建築や住宅における考え方は、今後どのような方向を目指すべきなのでしょうか。「社会資本としての住環境研究会」では、ライフタイム・ホームズという住宅の作り方を契機にし、さらに「障害の社会モデル」や「合理的配慮」というキーワードから、もう一度、バリアフリーやユニバーサルデザインを捉え直す試みを行い、そこから障害当事者が参加する計画のプロセスや、それによって見直される建築や住宅のデザインの手法、そして住み続けられる「まち」について考えています。
情報保障:手話通訳、文字通訳
*2018年1月に開催した第1回研究会「地域の中で考える住宅のあり方について」の内容は以下でご覧いただけます。
http://www.lifetimehomes.jp/events01.html