REDDY 多様性の経済学 Research on Economy, Disability and DiversitY

精神障害のある女性のための研究会

2025年5月7日

精神障害のある女性のための研究会

第3回

精神障害のある女性のための研究会(2025年4月17日)開催レポート

社会福祉法人トラムあらかわさんをお呼びして、業務内容についてのご説明をしていただきました。
社会福祉法人トラムあらかわは「ひとりぼっちにさせない」を標語に、精神障害のある方の地域での活動を支える団体です。1983年に地域の家族会が作業所を始めたことが団体の始まりだそうです。現在、荒川区で4つの事業所を運営しています。

「荒川ひまわり」・・・就労継続支援B型・就労定着支援を行なっており、パウンドケーキの製造・販売を行なっています。「パウンド屋」という店舗も経営しています。工賃を稼ぎたいと強く考える利用者さんが多いそうです。

「荒川ひまわり第2」・・・就労継続支援B型になります。クッキー作りや内職を行なっており、「荒川ひまわり」よりも緩やかな働き方になります。

「支援センターアゼリア」・・・地域活動支援センターⅠ型・特定相談支援事業を行なっています。都電荒川線「宮ノ前」駅から徒歩3分の場所にあり、日中の居場所として機能しています。精神保健福祉士・ピアサポーターなどが在籍し、生活相談を行うほか、交流室ではレザークラフト作りやボードゲームなどをしています。その他、日中活動では卓球やソフトバレーボールも行なっており、ソフトバレーボールは年一回、大会に出ているそうです。
自主サークルも多数あり、ここで知り合った人同士が自主的にカラオケやレストランに行ったりもします。
利用者の住まいを荒川区に限定していないので、様々な地域の人がやってくるそうです。利用料は無料。(何か作成する時の材料費と交通費は自己負担)利用するときには登録が必要ですが、地域のお年寄りが将棋をやりに来たり、子供達が遊びに来るなど、開かれた場所になっています。また、ケアプランの作成も行なっています。
電話相談は大変多く、話が長くなってしまうので、20分という時間制限があります。何回かけても繋がらないので、相談の電話回線を増やしてほしいという要望があるそうです。

「ホームとらむ」・・・グループホームになります。共同生活援助・自立生活援助を行なっています。グループホームは「通過型」になり、2年の利用期限があります。通過型グループホームとは、病院や家庭などの生活から、地域での自立的生活の練習をする場所です。世話人は365日在中していますが、夜勤はありません。起床や消灯時間は決まっておらず、門限もありません。食事や洗濯、掃除も各自で行います。
利用料は共益費、月額9,000円、夕食会費(週二回夕食が用意される)13,000円で、合計22,000円。入居の契約時に50,000円の補償金が必要ですが、退所の時に返却されます。
グループホームは人気があって入れないのではないですか?と質問したところ、空き情報を載せているサイトがあると教えてもらいました。
『東京都精神障害者共同ホーム連絡会』
https://tokyo-homeren.com/home-list/empty-room

その他・・・地域移行・地域定着支援として、精神科病院に長期入院している患者さんのところへ行き、退院後のサービスを考え、相談に乗っています。

【アゼリアで力を入れていること】
  • 地域ボランティア活動として、フードパントリー(生活困窮者への食料品を提供)を行っています。
  • 子ども食堂に出向き、ゲームの会を行っています。
  • 荒川区にある他団体「子ども村ほっとステーション」(困難を抱えた子供を支援する団体)へ行き、出張プラモ部を開催しています。
  • W R A P(元気回復行動プラン)のファシリテーターが2名おり、月に二回開催しています。
  • 地域の方に自分たちの団体を知ってもらうために「ひとりぼっちにさせニャい祭り」を開催し、落語家を呼んでイベントを行いました。

支援センターアゼリアに来所される方はネットで調べてきた方や、保健師さんに紹介されてきた方、友人、知人の紹介が多いそうです。広報にもっと力を入れて、自分たちの団体のことを知ってほしいと語っておられました。また、8050問題(高齢の親と同居する無職やひきこもり状態の子どもが抱える生活課題)を抱えている方にもっと繋がりたいとおっしゃっていました。

【研究会参加者の感想】
  • 利用料が無料なのに驚いた。精神科デイケアを日中の居場所として利用していたが、一日800円程度かかっていたので。(自立支援を使っていたので一割負担。金額の上限があるので、それに達すると払わなくていいが医療費はかかっている)デイケアに通っていた時「デイケアに通えないと社会復帰できない」とスタッフに言われて、必死に通っていたが、支援計画すら作ってもらったことがなかった。
  • 利用するのに住んでいる地域を限定しない、障害者だけでなく、お年寄りや子供、遠方から来ているのが凄い。逆に障害がなくても日中の居場所を必要としている人が多いのではないか。
  • 実際に社会福祉法人で働いている人のお話が聞けて、とても参考になりました。
  • 自分が使っている機関だったのですが、知らないことばかりでした。とても恵まれているところに住んでいると思いました。使っているものの中でも分かっていないことが多かったです。
  • 自分の地域には地域活動支援センターがあるのかすら分かっていなかったため、大変勉強になりました。
  • 当事者と関わっている人たち(支援者)目線の話が聞けて興味深かった。
  • 自分から動いていくことが、大切だと考えさせられた。
  • こういう機会がないと、そもそも何を聞けばいいのかも良く分からなかった(何が分からないのか分からない)ので、資料があったり、自分以外の人の目線があるのが有意義だった。
【気づいたこと】
  • 具体的な目的が違うのを知らなかった。
  • 自分が支援やケアが必要な立場なので、偏見とか以前に「知られていない」のが課題とは思わなかった。
  • 「元気なうちに、体調が悪くなる時の自分へのメモを残しておく」という考え方、対処法は参考にしていきたい。
  • 女性が参加しやすいプログラムが少ないと感じました。女性のプログラムをプッシュしてみたいと思いました。元気なうちにいろいろ調べるのは大事だと思いました。
  • 子ども食堂へ出向くのはとても良いと思いました。現在、困っている子供は大人になってからも困難に遭遇する確率が高いので、子供の時にこういう支援をしているところがあるのを知っておくのはとても大切。
  • プラモデルを作るクラブがあるなら女の子向けのものがあっても良いと思いました。コスメを試すとかいいかも。
  • ショートステイができる場所が少なくて、予約がいっぱいなのを知らなかった。
  • グループホームの家賃が無料で驚いた。(生活保護の場合は家賃補助がある)費用も安く、障害年金があれば暮らせる金額。もっと早く知っていたら使いたかった。

文責・小林エリコ

2025年1月20日

精神障害のある女性のための研究会

第2回

精神障害のある女性のための研究会(2024年10月17日開催)のレポート

前回行ったテーマ決めの際に、メンバーの中から要望の多かった「就労」「役所・社会資源」の専門家の選定を行いました。

「就労」…株式会社LITALICOに依頼

  • 障害者就労移行施設では、どのような支援を行っているか。
  • 障害者枠の求人にはどんなものがあるか。
  • 精神障害者の就労状況について
  • A型事業所、B型事業所の説明

「役所・社会資源」…講師依頼は不可

  • 障害支援課の業務内容について(電話で区役所に問い合わせ)
    • →業務が多岐にわたっており、一つの課で行っていないので、一括して話すのは難しい。精神保健に関することは保健所に任せている。保健所の保健婦が話を聞き、住宅へ伺うこともある。障害福祉の手引きなどは配布している。引きこもり、8050問題など、生活保護の課と連携することもある。重層式支援体制と言い、あらゆる種類の困りごとに対応する制度もできた。困りごとに関しては業務を外部委託している。区役所に基幹相談支援センターを設置し、社会福祉法人の人が相談に応じている。

「役所・社会資源」…社会福祉法人トラムあらかわに依頼

  • トラムあらかわの事業内容(相談支援センター、就労継続支援B型、グループホーム等)

一回の講義は60分を予定。質疑応答は30分。

【話し合いをした感想】
  • 自分では利用したことのないA型事業所や、社会福祉法人の話が聞けてためになった。
  • ぼんやりと「支援」ってなんだろうという思いがずっとあったので、自分は何が分からないのか分かった気がします。
  • 福祉サービスに地域差があったり、精神保健福祉の発祥を知れてよかったです。
  • 自分が知らない団体や支援者を知ることができた。
  • 情報にたどり着く難しさを知りました。地域差、個人差がある。
【話し合いをして気づいたこと】
  • 女性の貧困が問題になっている中、病とともに生きなくてはいけない「つらさ」があることを改めて実感しました。
  • 生活している地域による違いに、自分が関心を持っていることに気づけた。他の人の経験を聞いてみたいと思った。(体験発表ほどの深さでなくとも)
  • みんないろいろ困りごとがある。
  • 地域によって違う?かどうかもよくわからないこと。
  • A型、B型の事業所の話が興味深かった。いろんな人から体験談を聞いてみたい。
  • 自分が使っている資源が少ない。
  • 病院にソーシャルワーカーの配置が義務付けられていることを知らなかった。
【次回、話したいテーマがあれば】
  • 薬を飲むのが辛い。副作用について。
  • 生活するのが大変。みんな家事とかどうやっているの?
  • 病気を持ちながらの子育てに興味がある。
  • 医療を深めていきたい。
  • それぞれが、今、何に一番困っているか。症状、お金、生きがい、多忙、等。
【研究会で学びたいこと、知りたいこと】
  • 他の人の困り感。女性の集まりなので。(座談会で良い)
  • 大した理由でもないのに病んでしまったのは心が弱いからなのか。実際弱いならどうしたらいいか。
  • オーバードーズに至る心理等。
  • 地域や関わっている機関による支援の差など。
  • 人による生きにくさの違い
  • 「女性の貧困」という言葉の詳細。男性と違う問題は何があるのか。
  • LGBTQの方への対応についてどう考えているのか(どのような課題があり、議論がされているのか)
  • ひきこもり支援

文責・小林エリコ

2024年11月8日

精神障害のある女性のための研究会

第1回

「精神障害のある女性のための研究会」を発足しました

研究会の発足理由を以下に記します。

「令和5年の障害者白書によると、精神障害者の概数は614.5万人。男性が264.2万人に対して、女性は350.3万人となっている。日本の女性は社会的に弱い立場に置かれており、家庭内、学校、職場などで暴力を受けることがある。仕事も不安定な非正規雇用が多く、令和4年の賃金構造基本統計調査では全年齢において女性の平均年収は300万円に満たない。貧困や仕事、家族関係でストレスを抱え、カウンセリングを受けようとしても、保険が適用されないので受けられない人が多数いる。精神科なら保険が効くが、診療報酬の制度上、診察を短い時間で済ませる医師が多く、薬を処方するだけで終わってしまうことが多い。
女性が受ける困難と精神疾患の関係を紐解きながら、精神障害のある女性を支える支援や制度はどんなものが良いのかを考える場にする。」

研究会メンバーは私を含め5名。全て女性の精神障害当事者で構成されています。
今年度は参加メンバーによる体験発表。来年度からは識者を呼んで精神障害にまつわる様々なことを勉強する場にします。

6月26日に第1回目では、自己紹介と研究したいテーマ出しをしました。8月22日の第2回目では小林の体験発表を行いました。

【小林エリコの体験発表】

家族構成は父と母と兄の四人家族。父はサラリーマンだが、酒癖が悪く、毎晩夜遅くに帰ってきては母に暴力を振るう。母は専業主婦で父に歯向かうことができない。父はギャンブルも好きで、毎週末、競馬競輪に行く。そのため、家が貧乏で学校の教材が買えない時があった。

小学校3年生の時に、兄から性虐待を受ける。体が汚ければ兄から性虐待を受けないで済むと思い、お風呂に入る頻度が1か月に1回になる。不潔になったことが原因で学校でのいじめが始まり、中学生になっても同級生から執拗ないじめを受けた。

兄からの性虐待は私が高校生になった時にはなくなったが、心身に深刻なダメージを受ける。希死念慮、不眠、うつ状態が続き、高校2年で精神科を受診する。病名の告知はなく、薬だけ処方される。

大学は美大に行きたかったが、両親に反対され、希望とは異なる短大に進学。卒業したが、就職氷河期のため、就職先が決まらないまま卒業。実家で引きこもりの生活を送るが、友人の勧めで上京する。

東京で一人暮らしを始める。編集プロダクションに受かり、勤務するが、月給12万。社保なし。残業代なし。貧困に陥るが、頼る人がおらず、自殺を図る。

精神病院に一か月半入院。退院後、母と暮らし始める。父は伯母の家に引っ越した。

仕事を探すが、何も受からない。リーマンショックが起こり、健康な人でも職を失う社会情勢。医師の勧めで障害者手帳を取得し、障害年金の受給を始める。ほぼ自宅にいる生活をしていたところ、医師に勧められて、精神科デイケアに通う。

精神科デイケアは楽しかったが、6年間通い続け、30歳を目前にして焦り出す。一生、実家にいながら精神科デイケアに通うという絶望感から2回自殺未遂。

デイケアのスタッフに勧められて、就労支援をするという約束をしてもらい、30歳で家を出て障害年金と親の送金で一人暮らしを始めるが、就労支援が行われず、親の送金がなくなり、33歳で生活保護を受給する。

36歳の時、自分でNPO法人の仕事を見つける。生活保護を切ることができた。NPO法人の時給が安く、社保にも長い間入れてもらえず、調子を崩し、措置入院をする。退院後、復職し、時間のある時に、生活保護の体験を同人誌で発表。出版社から声がかかり、商業誌でデビューする。著作がきっかけで松井研究室から声がかかり、雇用に至る。

【「日本の女性の精神保健福祉の向上」をテーマにブレインストーミング】
  • 医療
    • 合う医者となかなか出会えない。
    • 精神科があまりにも閉鎖的。
    • 病院間の格差。(受けられる医療が異なる)
    • 正しい病名にたどり着けない。
    • 東京都東京以外で医療が違いすぎる。
    • 病気がありながらの出産は高かった!(東大病院)満足はしている。
    • デイケアは必要なのか。
  • 生活
    • 風呂がしんどい。
    • 結婚すればいいよね問題。
    • 家事を私ばかりがしている。
  • 症状
    • 躁状態の時、躁だと気づけない。
  • ホルモン
    • PMS。
    • ホルモンバランス。
  • 就労
    • ちゃんとした就労支援はどこで受けられる。
    • 仕事と家庭の両立の難しさ。
    • 就労支援。(障害者雇用の給与)
    • 社会における男女の格差。
    • 女の給料が安い。
    • 仕事がない。
    • 職場に戻る難しさ。B型とパートはOKだが就労移行中は働けない。慣らしたい。
  • 依存症
    • アルコール。
    • オーバードーズ。
    • 薬をやめられず妊娠を諦める人がいる。
    • 薬の副作用が辛い。
    • 薬を飲むのが面倒。
  • 性暴力
    • トラウマ。
    • 性暴力。
  • 自殺
    • 自殺。
  • カウンセリング
    • カウンセリングが高い。(2名同意見)
  • 差別
    • 精神障害者への差別が辛い。
    • 付き合っている男性の母親に病気がバレると嫌がられる。
  • 役所・社会資源
    • 生保のケースワーカーいきなり訪問。(男)
    • 区の職員がハズレだった時の対処法。
    • 病気がありながらの子育て支援。休んでと言われるけど難しい。休むことに罪悪感。同志がいない。
    • 来てくれと言われるけど、うつが辛いと行けるか‼問題。
    • 生保のケースワーカーが酷い。
    • 相談先が点在していて全貌が良く分からない。
    • 受けられる制度が分かりにくい。
    • LGBTQの人はどこに相談すればいいか。
  • つながり
    • ヤングケアラー。
    • 地域との繋がり(隠されがちということ)。
    • 孤立しない方法

文責・小林エリコ