社会福祉法人トラムあらかわさんをお呼びして、業務内容についてのご説明をしていただきました。
社会福祉法人トラムあらかわは「ひとりぼっちにさせない」を標語に、精神障害のある方の地域での活動を支える団体です。1983年に地域の家族会が作業所を始めたことが団体の始まりだそうです。現在、荒川区で4つの事業所を運営しています。
「荒川ひまわり」・・・就労継続支援B型・就労定着支援を行なっており、パウンドケーキの製造・販売を行なっています。「パウンド屋」という店舗も経営しています。工賃を稼ぎたいと強く考える利用者さんが多いそうです。
「荒川ひまわり第2」・・・就労継続支援B型になります。クッキー作りや内職を行なっており、「荒川ひまわり」よりも緩やかな働き方になります。
「支援センターアゼリア」・・・地域活動支援センターⅠ型・特定相談支援事業を行なっています。都電荒川線「宮ノ前」駅から徒歩3分の場所にあり、日中の居場所として機能しています。精神保健福祉士・ピアサポーターなどが在籍し、生活相談を行うほか、交流室ではレザークラフト作りやボードゲームなどをしています。その他、日中活動では卓球やソフトバレーボールも行なっており、ソフトバレーボールは年一回、大会に出ているそうです。
自主サークルも多数あり、ここで知り合った人同士が自主的にカラオケやレストランに行ったりもします。
利用者の住まいを荒川区に限定していないので、様々な地域の人がやってくるそうです。利用料は無料。(何か作成する時の材料費と交通費は自己負担)利用するときには登録が必要ですが、地域のお年寄りが将棋をやりに来たり、子供達が遊びに来るなど、開かれた場所になっています。また、ケアプランの作成も行なっています。
電話相談は大変多く、話が長くなってしまうので、20分という時間制限があります。何回かけても繋がらないので、相談の電話回線を増やしてほしいという要望があるそうです。
「ホームとらむ」・・・グループホームになります。共同生活援助・自立生活援助を行なっています。グループホームは「通過型」になり、2年の利用期限があります。通過型グループホームとは、病院や家庭などの生活から、地域での自立的生活の練習をする場所です。世話人は365日在中していますが、夜勤はありません。起床や消灯時間は決まっておらず、門限もありません。食事や洗濯、掃除も各自で行います。
利用料は共益費、月額9,000円、夕食会費(週二回夕食が用意される)13,000円で、合計22,000円。入居の契約時に50,000円の補償金が必要ですが、退所の時に返却されます。
グループホームは人気があって入れないのではないですか?と質問したところ、空き情報を載せているサイトがあると教えてもらいました。
『東京都精神障害者共同ホーム連絡会』
https://tokyo-homeren.com/home-list/empty-room
その他・・・地域移行・地域定着支援として、精神科病院に長期入院している患者さんのところへ行き、退院後のサービスを考え、相談に乗っています。
支援センターアゼリアに来所される方はネットで調べてきた方や、保健師さんに紹介されてきた方、友人、知人の紹介が多いそうです。広報にもっと力を入れて、自分たちの団体のことを知ってほしいと語っておられました。また、8050問題(高齢の親と同居する無職やひきこもり状態の子どもが抱える生活課題)を抱えている方にもっと繋がりたいとおっしゃっていました。
文責・小林エリコ
前回行ったテーマ決めの際に、メンバーの中から要望の多かった「就労」「役所・社会資源」の専門家の選定を行いました。
「就労」…株式会社LITALICOに依頼
「役所・社会資源」…講師依頼は不可
「役所・社会資源」…社会福祉法人トラムあらかわに依頼
一回の講義は60分を予定。質疑応答は30分。
文責・小林エリコ
研究会の発足理由を以下に記します。
「令和5年の障害者白書によると、精神障害者の概数は614.5万人。男性が264.2万人に対して、女性は350.3万人となっている。日本の女性は社会的に弱い立場に置かれており、家庭内、学校、職場などで暴力を受けることがある。仕事も不安定な非正規雇用が多く、令和4年の賃金構造基本統計調査では全年齢において女性の平均年収は300万円に満たない。貧困や仕事、家族関係でストレスを抱え、カウンセリングを受けようとしても、保険が適用されないので受けられない人が多数いる。精神科なら保険が効くが、診療報酬の制度上、診察を短い時間で済ませる医師が多く、薬を処方するだけで終わってしまうことが多い。
女性が受ける困難と精神疾患の関係を紐解きながら、精神障害のある女性を支える支援や制度はどんなものが良いのかを考える場にする。」
研究会メンバーは私を含め5名。全て女性の精神障害当事者で構成されています。
今年度は参加メンバーによる体験発表。来年度からは識者を呼んで精神障害にまつわる様々なことを勉強する場にします。
6月26日に第1回目では、自己紹介と研究したいテーマ出しをしました。8月22日の第2回目では小林の体験発表を行いました。
家族構成は父と母と兄の四人家族。父はサラリーマンだが、酒癖が悪く、毎晩夜遅くに帰ってきては母に暴力を振るう。母は専業主婦で父に歯向かうことができない。父はギャンブルも好きで、毎週末、競馬競輪に行く。そのため、家が貧乏で学校の教材が買えない時があった。
小学校3年生の時に、兄から性虐待を受ける。体が汚ければ兄から性虐待を受けないで済むと思い、お風呂に入る頻度が1か月に1回になる。不潔になったことが原因で学校でのいじめが始まり、中学生になっても同級生から執拗ないじめを受けた。
兄からの性虐待は私が高校生になった時にはなくなったが、心身に深刻なダメージを受ける。希死念慮、不眠、うつ状態が続き、高校2年で精神科を受診する。病名の告知はなく、薬だけ処方される。
大学は美大に行きたかったが、両親に反対され、希望とは異なる短大に進学。卒業したが、就職氷河期のため、就職先が決まらないまま卒業。実家で引きこもりの生活を送るが、友人の勧めで上京する。
東京で一人暮らしを始める。編集プロダクションに受かり、勤務するが、月給12万。社保なし。残業代なし。貧困に陥るが、頼る人がおらず、自殺を図る。
精神病院に一か月半入院。退院後、母と暮らし始める。父は伯母の家に引っ越した。
仕事を探すが、何も受からない。リーマンショックが起こり、健康な人でも職を失う社会情勢。医師の勧めで障害者手帳を取得し、障害年金の受給を始める。ほぼ自宅にいる生活をしていたところ、医師に勧められて、精神科デイケアに通う。
精神科デイケアは楽しかったが、6年間通い続け、30歳を目前にして焦り出す。一生、実家にいながら精神科デイケアに通うという絶望感から2回自殺未遂。
デイケアのスタッフに勧められて、就労支援をするという約束をしてもらい、30歳で家を出て障害年金と親の送金で一人暮らしを始めるが、就労支援が行われず、親の送金がなくなり、33歳で生活保護を受給する。
36歳の時、自分でNPO法人の仕事を見つける。生活保護を切ることができた。NPO法人の時給が安く、社保にも長い間入れてもらえず、調子を崩し、措置入院をする。退院後、復職し、時間のある時に、生活保護の体験を同人誌で発表。出版社から声がかかり、商業誌でデビューする。著作がきっかけで松井研究室から声がかかり、雇用に至る。
文責・小林エリコ