東京大学大学院経済学研究科・特任研究員 [建築計画]
研究テーマ
インクルーシブなまちづくり —社会的共通資本としての住環境整備
アクセシブル・アフォーダブルな住宅供給制度
都市の住環境構築における多様な住宅確保要配慮者の地域での社会的包摂のために、様々なニーズに対応した住宅と住環境の安定的かつ持続的な供給を目指し、これを教育、医療・介護・福祉などの制度資本の充実と併せて生活基盤となる社会的共通資本の整備として捉え、そこで必要となるフォーマルおよびインフォーマルな制度や組織、都市のインフラストラクチャーに関し、住宅セクターと福祉セクターの連携による整備の促進のための都市計画・都市政策における総合的な住宅政策を考えています。
開発計画における官・民連携によるアクセシブルな住環境整備や規制緩和に対する条件付けなどの制度によるアフォーダブルな住宅供給を促進するための政策のあり方について、およびアフォーダブルな住宅供給における市場と公共財の役割や、居住支援における官・民のインセンティブ、住宅・福祉の連携のあり方などについて、建築・都市・福祉・経済研究のアプローチの統合によって分析し、居住支援を中心とした住宅保障のための住環境整備と住宅供給のための住宅政策や社会的な制度に働きかける政策デザインを考察します。
さらに地域コミュニティや居住支援、高齢者・障害者福祉の研究者との連携も図りながらこれらを社会的共通資本として総合的に考察することによって、都市の住環境構築における都市計画・都市政策としての総合的な住宅政策に必要な制度の構造を明らかにします。
その研究を始めた理由、きっかけ
多様な人々に適切な住宅と選択肢を提供し、様々なマイノリティを地域に混在させるために、ロンドンでは市長の戦略的都市政策としてアクセシブルな住環境整備およびアフォーダブルな住宅供給を計画許可において一元的に制度化しています。
イースト・ロンドンの大規模再開発におけるアクセシブルな住環境整備について調査する中で、その充実は進んでいますが、一方でアフォーダビリティについてはまだ十分ではないことを見てきました。市の設定基準に沿って基本計画時に計画当局のチェックがあるものの、基準に対する代替措置があるために質的・量的に緩和されることもあり、近隣地域などでの開発による地域の地価や家賃の高騰により、低所得者が地域に住めなくなるいわゆるジェントリフィケーションの問題も出てきています。
今までの活動・研究について
主に建築計画.LIFFETIME DESIGN として考えた時の住宅(著書:『体験的ライフタイム・ホームズ論』, 彰国社, 2016)
ロンドンで市の都市政策により普及が進められてきたアクセシブルな住宅基準と都市の再開発で実践されているインクルーシブな地域環境の考え方について、また、ガイドラインやこれらの実現のための開発時の計画のあり方、許可制度やその中で培われてきたインフォーマルな制度、障害当事者参加とその役割、障害者をとりまく社会的な背景などを調査してきました。
イギリスのアクセシブル・アフォーダブルな建築環境整備のための法制度、ロンドンの都市空間開発戦略におけるアクセシブル・アフォーダブルな住宅供給の政策などについて調査、ロンドンで実際の開発計画の状況を視察しました。現地でインタビューを行い、それらの実現状況やそこでのフォーマル・インフォーマルな制度の有効性や意義などについてまとめています。
丹羽太一 エッセイ「都市のアクセシビリティ」